好きすぎてつらい
「好きすぎてつらい」って何だろう。
どうして、涙が出てくるくらい苦しいんだろう。好きな人と時間を共有すれば、同じ空間で過ごせたら、それで満たされるのだろうか。
きっと、ワタシは満たされない。
際限なく溢れ出てくるのが「好き」というものだと思っている。
最初は連絡が取れるだけで満たされた。声が聞けるだけで、LINEの文面を見るだけでいいと思えた。
君が好きな音楽とか作家とか。色んなことを知るたびにドキドキした。
だけど、好きは溢れてくるものだから、何だかもの足りたいから、少しずつ狂気を帯びていく。
君が書いた文章を指でなぞってみた。なんだか嬉しくなった。それと同時に、もっと触れたくなる。君の文章を写してみた。もっともっと欲しくなる。君の本を破いて食べてみた。カサカサした紙の質感が私の唾液と混ざって、ちょっと優しくなる。その紙が喉に刺さると愛おしさが込み上げてきた。
君をたべたい。
君の手も、爪も、目ん玉も、髪の毛も、うぶ毛も。全て食べつくしたい。
でも、食べちゃったら君のカタチがなくなってしまう。それでいい。イヤだ! ちがう! よくない! さびしい! もっと、君という存在を感じていたいんだ。そう、もっともっと身近に感じていたい。
そうだ! 良いことを考えた!
君の指とワタシの指を交換すればいい。慣れてきたら腕や脚も入れ替えよう。チグハグになったワタシ達は、お互いのカタチを残したまま、ずっと一緒に居られるんだし、同じ人間になれるんだし、こんなにも素晴らしいことはないと思う。
君の本の文字が滲んだ。ワタシは泣いてるんだ。できれば君を食べたくないし、チグハグになりたくない。本当は、ただ、君と同化したいだけなんだよ。